ツナの薬理研究室

科学、薬学、趣味などをぼやいている生物です。

ウイルスに対して薬が創られていない事情、知りたくないですか?

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『あなた〜の風邪に狙いを決めて、ベ・◯・ザ・ブロック♪』

これは誰もが知ってる、とあるCMソングですね。
『風邪を引いたらベ◯ザブロック飲めば治るから平気だろ!』と、親や上司なんかに言われた人も多いでしょう。

しかし、それを鵜呑みにしてしまったアナタ……残念ですが……

【あなたはすでに洗脳されています】


……


おっとすいません、柄にもなく胡散臭い陰謀論者のようになってしまいましたが、私はまったく怪しいものではありませんよ。(怪しさ倍増)
流石に【洗脳】は言いすぎましたが、【勘違い】はしているかもしれません。

それは何かというと、"風邪は薬で治せない" と言うことです。
つまりこれが意味するのは、"ウイルスに対して薬は作れない"  と言う非常に大切なことです!

このことは重要なことで、新型コロナウイルスに対する治療薬が開発されない理由にもなります。

「はぁ?でも俺、風邪薬飲んで風邪治ってるんだけど?」

と、野次が聞こえてきてるので、早速これについて解説していきましょうか。(幻聴)

それでは、みなさんをプチ薬学の世界へご招待します!


 

風邪薬とは一体なんなのか?


普段フツーに生活していると、時たま風邪を引いてしまうものです。
風邪はどうして引いてしまうのか、と言いますと…

『微生物が、喉や鼻の上気道などの粘膜に感染し、急性の炎症を起こすため』です。
そして、この微生物の約80~90%以上が "ウイルス" を、残りは "細菌" を指しています。 

『微生物』『細菌』『ウイルス』の違いが分からない方は、以前のブログで書いていますのでぜひ覗いてみてください↓

tunamayon.hatenablog.com


なので大雑把に言い換えると、
『風邪』=『ウイルスが喉や鼻に感染して炎症を起こしている』
と考えてもいいでしょう。

では、風邪を引き起こすウイルスの種類はといいますと、ライノウイルスを始め、アデノウイルスコロナウイルス…と… 
その数なんと、200種類以上あるんですね!!!


ムリムリムリ!!バカやん!!多すぎやんwww


そうなんです!呆れるほど数が多くて枚挙にいとまがありません。
いやぁ、こんな種類の多いウイルスに対して効く風邪薬はすごい…!
と、思ってしまいそうですが、ここで一部の風邪薬の成分を見ていきましょう。

風邪薬中の一部の成分

アスピリンイブプロフェンアセトアミノフェン
『解熱鎮痛成分』で、その名の通り、熱や痛みを抑える成分です。

○クロルフェニラミンマレイン酸塩・ヨウ化イソプロパミド
前者は『抗ヒスタミン成分』、後者は『抗コリン成分』で、鼻水やくしゃみなどを抑える効果があります。

○ジヒドロコデインリン酸塩・デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物
『鎮咳成分』で、辛い咳を沈める成分です。

○トラネキサム酸・塩化リゾチーム
『抗炎症成分』で、喉や鼻の腫れを和らげてくれる成分です。


まだ色々あるんですが、今挙げたものをよく分析してみてください。

どこに『原因であるウイルス君をぶっ潰します』って成分がありますか!?

ないんですよ!つまり風邪薬を要約すると…
『あなたの辛い風邪の諸症状は抑えますから、原因であるウイルスは自分の免疫でなんとかしろや♡』
って言ってるんです。

これが "風邪薬" の真実なのです…(陰謀論者ではない)

 

ウイルスに対しての薬が少ない理由


ではなぜ『原因であるウイルス君をぶっ潰します』という成分はないんでしょうか?
これは "ウイルスの構造" にヒミツがあるんです。

前回の記事で "ウイルスの構造" は、カプシドやエンベロープなどの簡単な構造でできていて、決まった形がないと述べました。(分からない方は、上記の過去記事を読んでみてください)

"簡単な構造でできている" + "決まった形がない" + "薬の開発コスト"

が、最大の原因なのです!

①"簡単な構造でできている"

ウイルスは、カプシドやエンベロープなどの簡単な構造なために、『薬で破壊できそうな場所が少ない』のです。

しかも生物の細胞の機能を乗っ取って自分を増やすので、『その生物の細胞には毒性がないもの』である必要もあります。

故に薬になる化学物質が限られてしまうのです。

②"決まった形がない"

さらにウイルスには決まった形がなく、多様性があります。
例えば、カプシドだけのウイルスもいますし、スパイクという部品がくっついてるウイルスもいます。加えて、大きさも、構造に使ってる材料も違います。
『ウイルスは千差万別』なのです。
なんとか薬を創ってもウイルスの形、大きさ、材料が違えば途端に効かなくなります…

この要因も出てくると、本当に薬を探すのが超大変なのです…

③"薬の開発コスト"

この話をし始めると、キリがないのでサクッといきますが、
みなさん、1つの新薬を開発するのにどれくらいコストがかかるか知ってますか?

開発日数:約15年(世に出るまで)
開発費用:数百億円~数千億円
薬になる化合物の発見確率:0.005%以下

上記の要因に加えて、さらにこんな無茶苦茶な労力が加わるのです…
しかも大抵の風邪は自分の免疫で治っちゃうんですよ??

そりゃ誰も薬つくらねぇよ!!!!

と、以上が誰しも納得のウイルスに対しての薬が少ない理由となります…笑

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ウイルスに対する人類の最終手段

では、ウイルス感染に対して人間はどのような策を講じているんでしょうか?
簡単にご紹介しましょう。

まず1つ目は、風邪薬などの『対症療法』です。
原因であるウイルスを殺すのはあくまで自分の "自然免疫" ですので、風邪の諸症状を抑える風邪薬は自分を『辛くないよ!』と騙している薬に過ぎません。

いいですか、風邪の特効薬は "しっかり休むこと" であることを忘れずに。
(薬は適材適所で使いましょう)

2つ目は、『ワクチン』です。
自然免疫には "一度倒した相手の情報を記憶する機能" があります。だったらウイルスが体に侵入してくる前に、体にウイルスの一部を入れて模擬戦をさせれば良いのです!

模擬戦をすることで免疫が戦い方を記憶し、万が一感染してもスムーズに倒すことができます。
これが俗にワクチンと言われるもの効果ですね。

3つ目は、ウイルスを直接殺す原因療法『経口薬』です。
さっき抗ウイルスは開発が難しいといいましたが、創れないわけではありません!
実際に抗インフルエンザウイルス薬はあるわけですしね。
なぜインフルは薬があるのかと言うと、『致死性が高い超絶ヤベェウイルス』だからです。要は、人類を脅かすブラックリストに入ったウイルスは薬の開発がされます。

『インフル、てめぇは人類に喧嘩を売り過ぎた…お前は特別に薬で殺す!』
という人類の強い殺意があったから生まれた薬といってもいいでしょう笑

まとめ

少し大雑把に解説してしまったところもありますが、抗ウイルス薬が簡単に作れいない理由が少しでも理解していただけたでしょうか?

パンデミックを起こしている新型コロナウイルスのワクチンはすでに開発され、エゲツない有効率のある最強ワクチンが光速で開発されました。

今は世界中のエリート研究者が、必死になって経口薬の開発を行ってくれていると思います。(新型コロナはブラックリストには入ってると思うので…笑)

なので、研究者のみなさまを応援しつつ、僕らは正しい薬の使い方、そして情報の取捨選択をしていきましょう!

それでは〜。

 

おまけ:YouTube動画

風邪薬の話を動画でみたい方はこちらからどぞ!


www.youtube.com